☆大前提として
・体力を消耗するのは水の中をかいている時よりもリカバリーのときが多い
・初心者は上級者の泳ぎを観察するときに「水の中でどう動いているか」に注目しがち
・フィニッシュからリカバリーの序盤は見てない
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☆リカバリーの基本的な動かしかた
・フィニッシュのときに肩甲骨を寄せる、リカバリーでは肩甲骨ごと手を前に持っていく。(これが最重要)
※リカバリーの動きの基本は『肩甲骨の内転+下制』からの『上方回旋』。ここをプール内で説明するのは難しいので『フィニッシュのときに肩甲骨を寄せる』と説明する人が多い。
・リカバリー時の体がTの字になるとき、手の甲が進行方向を向いている(=親指が下を向いている)のが望ましい。
・リカバリー開始からTの字より前までは小指が進行方向を向いていてもOK
・リカバリー開始直後から親指が進行方向を向いているのは注意。三角筋前部の局所疲労がおこりやすい。
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☆コーチ視点の注意点
・「肩甲骨を寄せる」ではなく「胸をちょっと張る」、「肋骨ごと肩を回す」「背骨のラインを基準に回す」と表現するコーチもいる。
・「肩甲骨を寄せる」という表現だと、肩が後方に行きすぎたり、プル動作が初動で止まりやすくなる点に注意する。
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☆リカバリーで腕が上がらなくなる理由の一つは三角筋前部の局所疲労
・Tの字の姿勢の時に親指が進行方向を向いている人は三角筋の前部に負荷がかかりすぎている可能性がある。肩の前側が痛くなる人は要注意。
・筋トレ経験者にはダンベルを使ったサイドレイズで親指を上に向けている例がわかりやすい
・寄せていた肩甲骨が離れる反動を使って腕を投げるように入水すると距離を泳げるようになりやすい。しかし、肩甲骨の内転⇒肩甲骨の挙上っぽい動きになりがち。腕を前に持っていく動作は上方回旋である。
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☆リカバリーを改善するヒント
・プールの底に立って腕の動しかたを確認する。リカバリーの最初から親指が進行方向を向いてたら要注意。
・「シュッて手を抜く」の表現だと肘を引くようなフィニッシュになって肩甲骨が寄せられないかも
・片手バタフライはリカバリー時にローリングを使ってしまいがち。上にあがるのではなく、なるべく水面ギリギリを通るようにリカバリーする。肩甲骨周りを使う癖ができない。
・フィニッシュ~Tの字までは水しぶきが多くて動きも速いため、初心者が観察してもわかりにくい。一般人の動体視力では見えない。ビデオのスロー再生が効果的。
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☆「肩甲骨を寄せる」という表現について
・「肩甲骨を寄せる」という表現だと、リカバリーの初動で動きが止まりやすい(カックンとなるリカバリーになりやすい)。この場合は肩甲骨の内転+下制と上方回旋の動きを説明する。
・肩甲骨の6つの動作のうち、上方回旋と下方回旋は理解しにくい。内転だけなら理解しやすいが、内転+下制(フィニッシュ~リカバリーまで)になるとわかりにくい。
・腕を前から後ろへ回すイメージを持っている方には、ラジオ体操の腕の回し方(大きく円を描くように、肩を中心に腕を回す)をイメージしてもらう。
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☆入水~フィニッシュまでの手の動かしかた
・入水したら手の平を外側に向けてハイエルボーをつくる。アウトスイープは大きくとって
・顔の前あたりで第二キックを打ち(初心者は打たなくてもOK)太ももの横から手を払うイメージで水面に出していく。
・脇を少し開いて腕がハの時になっているほうが腕は回りやすい。枠を締めて真後ろにかくとリカバリーの初動で止まりやすい。
・片手バタフライはタイミングを覚えるのには有効。片手バタフライは手が簡単に戻るので、クロールのようにローリングをしてリカバリーしていると悪癖に繋がりやすいので注意する。
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☆第1第2キックの意味とタイミングについて
・第1キックは手が入水した辺りで打つキック。第2キックはグライドから体が上昇するときに打つキック。
・人によって泳ぎやすいと感じるキックのタイミングは異なる。第2キックのタイミングが遅いほうが長距離は泳ぎにくい。脚が抵抗になっても早いタイミングで打つほうが簡単。
・「第1キックを強く打って第2キックは弱く打つ」については第2キックを教えない選択肢もあり。
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☆第2キックで腰を反らないようにするポイント
・第1キックで体を浮かす。第1キックのアップキックはなるべく膝を伸ばしたままにする。
アップキックで膝を曲げてしまうとボディポジションが下がる。
・第2キックは体が上昇するときに打つので腰を反りやすい。腰を反った状態で強いキックを打とうとすると体力を削られやすい。
・第2キックを打つ時に腰を反っていると膝打ちキックになりやすい。第1キックのアップキックでボディポジションが下がると、第2キックでボディポジションを高くするために強いキックを打とうするが、もう腰を反れないので膝打ちキックしかなくなる。
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☆その他
・リカバリー時に肩甲骨を使えないと「入水時に指先が床を向き、上昇時に指先が水上を向いてからリカバリーをはじめる」泳ぎになりやすい。肩が水上に上がらなくてリカバリーできないため、大きくうねって勢いをつけなければならない。
・若い男性にありがちな「25m~50mは気合いでいけるけど100mは怪しい。200mは無理」。このタイプは肩甲骨の使いかただけで劇的に変わることもある。
※25mなら泳げるけど50mや100mは泳げないかたを想定しています。